「取引の8要素」って、覚えなきゃダメなの?
簿記3級を勉強し始めると出てくる「取引の8要素」。「簿記取引の8要素」と言われたりもします。簿記を勉強している人でも、「それってなんだっけ?」と思う人も多いと思います。この図です。
この図って、覚えなきゃいけなんでしょうか。
こんなの覚えなくていい!
この図は、私の経験から言えば覚えなくていいです。この図は、ある程度仕訳の世界に慣れてこないと意味不明な図でしかないと思います。私がこの図の意味するところを掴んだのは、簿記2級に受かった後、実際に経理部で仕事で仕訳を切り始めてからでした。そしてその後も、この図を活用して何かをしたことはありません。使わないものは覚えても意味がありませんよね。
じゃあ、なんでこんな、初学者には絶対にわからない意味不明な図を出すのでしょうか。それは・・・、私にもわかりません。たぶん、簿記学や会計学としては大切な図なんでしょう。でも、こんなのは初学者の人を惑わせるだけの邪魔なものだと私は思います。
逆に考えれば、簿記教材の良い判断基準になる
ですが、逆に考えてみましょう。こんな、初学者の人には百害あって一利無しな図を出すような簿記3級の教科書は、初学者の心の動きを全く理解していないダメな教科書です。なので、これから簿記3級を勉強する人は、この図が載っている教科書は避けましょう。不幸にももう買ってしまっている人は・・・、とりあえずその部分はスルーして、その後もその教科書を使い続けるかどうか判断しましょう。まあ、この図が載っているかどうかだけで良い本かどうか判断するのは乱暴ではありますが、「この本、なんか合わない気がするな~」と思っている人は他の本に買い換えるのも良いかも知れません。簿記3級なら、1000円~2000円くらいで買えますしね。
代わりにこれを覚えよう
で、この図を覚えるくらいなら、仕訳の型を覚えましょう。そっちの方がよっぽど役に立ちます。簿記3級を勉強し始めの人が覚えるべき仕訳は、下の4つです。
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1.商品を100円分、掛けで売った。
売掛金 100円 / 売上 100円
この仕訳で、
「売上が発生した時は右側に書くのだ」
「売掛金という資産が増えた時は左側に書くのだ」
ということを覚えて下さい。
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2.100円の売掛金を現金で回収した。
現金 100円 / 売掛金 100円
この仕訳で、
「売掛金という資産が減った時は右側に書くのだ」
「現金という資産が増えた時は左側に書くのだ」
ということを覚えて下さい。
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3.商品を100円分、掛けで仕入れた。
仕入 100円 / 買掛金 100円
この仕訳で、
「仕入という費用が発生した時は左側に書くのだ」
「買掛金という負債が増えた時は右側に書くのだ」
ということを覚えて下さい。
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4.100円の買掛金を現金で払った。
買掛金 100円 / 現金 100円
この仕訳で、
「買掛金という負債が減った時は左側に書くのだ」
「現金という資産が減った時は右側に書くのだ」
ということを覚えて下さい。
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この4つの仕訳だけしっかり覚えて、先に進んでしまいましょう。「取引の8要素」の図は、とにかくスルーして下さい。
結果として著者が言っているのは「取引の8原則」になっています。
一つ一つの科目名を覚えなくても、まず「資産」「負債」「資本」「収益」「費用」の意味を理解すれば、あとは「取引の8原則」(仕訳の8原則)は素直に理解できると思います。
著者が言われるようにするならば、あらゆる取引種類ごとに「借方は? 貸方は? えーとなんだっけ?」と考えなくてはなりません。
8原則の図は覚えなくとも、その対比関係は絶対のものです。例えば当座預金の増加と借入金の増加が同じ借方になることはあり得ません。図を覚えていたら理解が速やかです。
自説を誇張するために、初学者のためにならないことを言い張るのは止めていただきたい。多くの教科書は過去の積み重ねで最良と思えることを書いているのです。
コメントありがとうございます。
私がこの記事で言いたいのは、「取引の8原則の図を覚えなくて良い」ということです。
また、初学者向けの本には「取引の8原則」という言葉はこの図と一緒にしか出てこないことがほとんどなので、このように「取引の8原則は覚えなくて良い」という書き方をしています。
そもそも、「取引の8原則」という言葉は、初学者向け書籍の中ではこの図に対してしか使われていないという現実があります。もし「取引の8原則」が有用なら、この図だけではなく、さまざまな仕訳の説明で「『取引の8原則』に従うと、この仕訳の意味は~」のような使われ方をするはずだと思います。既存の書籍等はそのような文章になっていないので、やはりこの図は初学者にとって意味がない図だ、と、有識者(本を作る人)も考えているのだろうと私は思います。
私としては、この文章で書いた通り、この図は初学者にとって有害でしかない、という信念です。この図を理解すれば確かに有用ですが、この図を理解するためには、他の通常のたくさんの仕訳の意味を、身体に馴染むように理解している必要があると思います。
私の考えとしては、この図は初学者向けの本の最後に出てくるのであれば有用であると思います。しかし、簿記学習のほとんどすべての本で、この図が出てくるのはかなり最初の方のページです。そのようなページ構成で出てくることは、初学者を惑わせ、無駄な時間を消費させていると思います。
日高さんには日高さんの信念がおありだと思いますが、私としてはそのような考えです。お気を悪くさせてしまい申し訳ありませんが、こいつはそういうやつなのだとご理解頂ければありがたいです。
また、この図は極めて大事な図なのだという信念をお持ちなのであれば、日高さんご自身でウェブサイト等を作ってこの記事に反論する文章をお書きになるのも自由です。もし強い想いがあるのであれば、そのようなご対応もぜひご検討ください。私も、日高さんのお考えを詳細に知りたいです。