検収基準・出荷基準とは
商売していれば必ず「売上」が絡んできますが、その会計的な計上タイミングは意外と奥が深いです。簡単に見ていきましょう。
売上計上のタイミングのいろいろ
売上計上については、基本的には「売上計上が早ければ確実性が低く、遅ければ確実性が高い」という性質があります。典型的な基準はいろいろありますが、実際に使われる基準はだいたい下記の4つです。
・受注基準
・出荷基準
・納品基準
・検収基準
パソコンを製造・販売する会社を例にとって見てみましょう。
パソコンを製造・販売する会社・・・、例えばヒューレットパッカード社みたいな会社ではウェブサイトから購入者が発注して受注しますよね。その大雑把な流れを左に書いてみました。まず、ユーザーがHPのウェブサイトからパソコンを発注します。その後パソコンの製造に入り、工場から出荷。運搬して、ユーザーの手元に届けます。そしてユーザー側で納品物のチェックをして、発注したものと違うものが来ていないかとか、不良品が混ざっていないかどうかを確認します。そしてOKとなれば検収され、支払いを済ませて一連の取引は終わります。
この中で、
- ユーザからの発注の瞬間に売上を計上してしまうのが発注基準。
- パソコンの製造が終わり、工場から出荷した瞬間に売上を計上するのが出荷基準。
- お客さんのところまで運搬が終わり、商品がお客さんの手に渡ったところで売上を計上するのが納品基準。
- お客さん側の納品物チェックが終わった時に売上を計上するのが検収基準
ということになります。
しかし、売上を計上するのはいいのですが、その売上が本当に現実のものになるかは、計上タイミングが早ければ早いほど不確定になります。例えば、ユーザーが発注した瞬間に売上を立てる発注基準では、ユーザーがキャンセルすれば一旦立てた売上はなかったことにしなければなりません。ユーザーの気持ち一つで売上が変わってしまうんですね。出荷基準でも同様のことが言えます。発注から時間が経っている分キャンセルの確率は少ないですが、それでもまだ可能性としてはあります。そして納品時。ここまでくればキャンセルということはないでしょうが、納品した後に不良品が混じっていることがわかればやはり売上はなかったことにしなければなりません。そして、ユーザ側で検収が終わった瞬間。この瞬間に売上を立てるのが、一般的には最も確実性が高い売上とみなしてもらえます。とはいえ、これも100%ではありません。パソコン会社側に重大な瑕疵や悪意があって不良品を紛れ込ませていた場合は検収後でも売上をなかったことにする場合もあるでしょう。
このように、取引の最初の方では売上がひっくり返る可能性は高いし、取引が終盤になればなるほどその売上の確実性は高くなります。なので基本的には検収基準で売上を上げるのが最も良いです。但し、発注されたらほぼ間違いなく売れる、という業種や商品も存在するので、そのような場合は発注基準で売上を上げる会社もあるでしょう。
ちなみに我々SIerの場合は、どう考えても検収基準で売上を立てるべきです。というか、そうでないと監査が通らないんじゃないかと思います。発注されても、プロジェクトが成功してお客さんの満足する製品をリリースできるかなんて誰にもわかりませんよね。プロジェクトがデスマったばあいも往々にしてあるわけで、発注されたら確実に売上が立ちます、とは誰もいえないでしょう。もしSIerで発注基準で売上を計上し、公表している会社があったとしたら、その会社の財務諸表は全く信じてもらえないと思います。
そんな感じで、様々な売上の計上タイミングがありますよ、というお話でした。