固定性預金とは何か
「固定性預金」という言葉があります。これ、ベンチャー企業なんかだとたま~に出てくるんですよね。私も経理部員の時に経験したことあります。実のところあんまり詳しいとこまで知らないんですけど、知ってる限りで説明しましょう。
解約できない定期預金
固定性預金とは、解約できない定期預金のことです。
え、そんな預金の種類あったっけ?と思った方。固定性預金とは、預金と名がついていますが、銀行の商品の名前ではありません。区分けは、多くの場合は普通の定期預金と同じです。ただ、その定期預金が途中解約できないように銀行から圧力がかかっている場合に、その定期預金は固定性預金と呼ばれ、会計上も普通の定期預金とは別の区分けで管理することになります。
なぜ、その定期預金を解約できないの?
じゃあ、なんでその普通なはずの定期預金が解約できないのでしょうか。いや、厳密に言うと解約してすぐに現金を手にすることはたぶんできます。でも、実際問題として、経営判断として解約ができない足かせがついてる場合があるんです。
たとえば、会社の社長と、その会社の取引先銀行の担当者である銀行員がこんな会話をしたとしましょう。
銀行員「いや~、社長、うちの銀行もノルマがキツくって大変なんですよ~」
社長「ははは、そうですか・・・」←無理難題を言われると思って怯えてる
銀行員「実は、今月の私のノルマ、新規融資の目標額を達成できるかどうか微妙なところなんですわ~」
社長「今はどこも大変でしょうからね・・・」
銀行員「そういうわけで、ちょっと今月、追加で1億円借りてくれませんか?金利は5%でいいんで」
社長「え、は、はい・・・」←銀行には逆らえない
銀行員「ただね~、ウチとしては御社にかなりお貸ししてますんでね、あんまり実質の貸出高を増やしちゃうとまずいんですわー」
社長「そ、そうですよね・・・」←銀行には逆らえない
銀行員「なのでね、ちょっとすいませんけど、お貸しした預金はウチの口座から動かさないでおいて欲しいんですわー」
社長「え、そ、そんなの、金利の払い損じゃないですか・・・」
銀行員「嫌ならうちの貸し付け、全部引き上げてもいいんですよー」
社長「え・・・、わ、わかりました・・・」
という会話の末、会社に借金と、動かせない預金が生まれます。この時に生まれた預金が「固定性預金」です。動かすと銀行との関係が悪化するので、そこに預金残高はあるけど動かせないのです。引き出せない、解約できない定期預金の出来上がりです。
こんな高圧的な取引許されるの?って気もしますが、実際問題として、こういう会話があって発生した定期預金なら経理の仕訳としては固定性預金にせざるを得ません。会社としてその借入が不満であれば、固定性預金の仕訳をとりあえずは切った上で、銀行を相手に裁判を起こすとか、そういうハナシになるでしょう。まあ、そんなことする会社なんかいないでしょうけどね。上記の会話はかなりロコツに書いてますけど、実際の銀行員はこれをオブラートに包んで絶妙に責任回避しつつ高圧的な交渉をしているはずです。
以上で説明おしまい。
人によって解釈は違うらしい
なお、私の経験した固定性預金は上記に書いた通りだったのですが、インターネット上を色々と調べてみると「普通の定期預金」のことを「固定性預金」と呼ぶ人もいるようです。たとえば下記サイト。
固定性預金とは|金融経済用語集
勘定科目の解釈が人によって違うんですかねー。私のいた会社では、上記の通りで定期預金と固定性預金は完全に別の勘定科目で取り扱ってたんですけどね。まあ、基本的に勘定科目名はある程度自由に決めてOKなところもあるみたいなので、意味の揺れみたいなのはあるかもしれません。ま、一例ということで。
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