収益還元法で算出した株価は流動性の低さを理由に減価できない
「収益還元法で算出した株価は流動性の低さを理由に減価できない」という判決が最高裁で出たようです。これについて少し解説しましょう。
目次
判決の概要
ニュースソースはこちら。
非上場株、収益還元法で計算した株価の減価認めず 最高裁 :日本経済新聞
判決の概要は、収益還元法、つまり将来の収益見込みを基準に現在の株式の価値を見積もった場合は、流動性の低さを理由にその価値を低く見積もることができない、ということ。
収益還元法とは?
たとえば、年間の配当が1000万円受けられる株式を持っていたとします。その配当が、たとえば20年間続くとすれば、1000万円*20年間=2億円受け取れることになりますよね。ということは、その株式は2億円の価値があるということになります。細かいことを言うともっといろいろ計算しなきゃならないんですが、ものすごく簡単に言うとそういうことです。これが収益還元法での株式の価値の算出です。
流動性とは?
一方で、流動性が低いと資産の価値は低く見るのが普通です。たとえば、1000万円の現金と、1000万円で買った土地を比べてみましょう。
1000万円の現金は、ソッコーで1000万円として使えますよね。つまり流動性が高いということです。
それに対して、1000万円の土地を1000万円の現金にするには、1000万円で買ってくれる人を探してこないといけません。探してくるのは労力がかかるし、時間がかかるし、お金もかかりますよね。そういう大変さを、「流動性が低い」といいます。
で、流動性が低い資産の価値は低く見られます。この1000万円の現金と1000万円の土地の例でいえば、1000万円の現金は1000万円と評価されますが、1000万円で買った土地は1000万円と評価されないのが普通です。ものすごく大雑把に言うとね。
非上場の株式は流動性が低い
で、非上場会社の株式は流動性が低いです。どういうことかというと、上場している株式は、市場でいつでも売り買いできます。私も株の口座を持ってますが、たとえばソニーの株を持ってたとしたら、今すぐにネット上から売り注文を出して現金化できます。簡単に現金になるということで、流動性が高いんですね。
それに対して、非上場会社の株式は上場してないので、市場で売却できません。売ろうとしたら買ってくれる人を個別に探してこなきゃなりません。上記の、1000万円の土地と同様に、買ってくれる人を頑張って探してくる必要があります。それには労力もかかるだろうし、時間もかかるだろうし、お金もかかるでしょう。ということは、非上場株は流動性が低くて、価値は低いはずなのです。
「収益還元法で算出した株式の価値は流動性の低さを理由に減価されない」
で、話は冒頭のフレーズに戻ります。「収益還元法で算出した株式の価値は流動性の低さを理由に減価されない」という判決を最高裁が出したんです。これまで、「収益還元法で算出した株式の価値は流動性の低さを理由に減価した」という例は多数あったようですが、それが今後は認められないということになります。
一般に株式ってのは会社の資産としてボリュームの大きい部分を占めるものなので、この判決が経済全体に与えるインパクトは大きいと思われます。おそらく、いろんな会社で特別利益や特別損失が出まくってしっちゃかめっちゃかになることでしょう。
この判決、個人的にはどうなのかなーと思います。流動性が低い資産を売るために労力がかかるのはどっからどう見ても当然の話で、そのコストが認められないとなるとちょっと実体経済と帳簿上の処理が合わない感じがします。
しかし最高裁判決が出たということは、今後はこれに従う必要があります。注意が必要ですね。
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