今さら問う。クラウドって一体なんなのよ。
世の中、何でもかんでもクラウドを名乗っております。クラウドコンピューティングのクラウドですね。でも、「ソレってクラウドって言えるの?」って疑問を持っちゃうモノもクラウドを名乗ってます。
目次
クラウドという言葉の意味は曖昧で劣化させられている
「クラウド」という言葉は今の日本の現状ではかなり広く曖昧な意味で使われています。なんというかこれでは「クラウド」って言葉を聞いた人が、その意味を理解できないんじゃないかなと思います。理解できなくて当然です。その意味するところが広い々々範囲で揺れ動いているのですから。
さらに言えば、「クラウド」という言葉の意味はかなり劣化させられて使われているところをしばしば見ます。クラウドって聞くとすごそうだけど、実際には全然すごくないことにクラウドって名前を付けちゃってるのがたくさんあります。
そういうのを見ると私としてはモヤモヤします。「クラウド」って言葉を適当に使って、システムの買い手の人たちに過大な幻想を抱かせ、結局最後には失望させてしまう。
そんなわけで、ハンパなSEの私ですが、「クラウド」の本来の意味するところと、実際に劣化して使われているところを簡単に説明してみます。一応防御線張っときますけど、ハンパなSEである私個人の認識ですからね。偉い人とか頭のいい人に聞いたら、もしかしたら他の意見もあるかもしれません。
クラウドの本来の意味:リソースを自由自在に拡張して使うこと
で、肝心のクラウドの本来の意味ですが、サーバのリソースを自由自在に拡張して使える環境のことです。ものすごく簡単に言うとね。
例えば、クラウドではない物理サーバにシステムが乗っかっていて、そのサーバにハードディスクが100GBしか載っていない場合、そのサーバにハードディスクを追加するには、システム停止→サーバシャットダウン→ハードディスク増設→サーバ起動→システム起動という手順がどうしても発生します。その場合、システム停止するということは、それに伴うユーザへの影響を考えなければなりません。例えば銀行のシステムなら、システムが停止している間はユーザは口座の残高が見れなかったり、振込の操作ができなかったりするわけです。
また、ハードウエアの増設が失敗した場合も考えるのが一般的です。ハードディスクを追加したらサーバが起動しなくなった、とか、まあたまにはあるハナシです。そういうのに対応するために別のサーバを用意して、そっちの別のサーバの上でもそっくりそのまんまシステムが動くように準備しとくってパターンもあります。
ハードディスクなんてそれ単体では高くても数万円で買えますけど、既存システムへの追加となると、旧来の物理サーバでは上記のようないろんな備えをしなきゃならなくて、そのための準備コスト・調整コストがとてつもなくかかってくるわけです。
でも、クラウドならボタン一発で拡張できます。本当にボタン一発なんです。AmazonAWSとかさくらのクラウドとかだと、前もって契約を結んでおいて、「ハードディスク追加したい!」となったらボタンを押せばOK。数十秒~数分後くらいにはハードディスク容量が追加されてます。
所要時間数十秒~数分。これはもちろん裏でAmazonとかさくらとかの人が超高速でハードディスクを物理的に追加しているわけじゃなくて、巨大なサーバ群の上に論理サーバが組まれていて、その論理サーバへ、既に存在する物理的なハードディスクの容量をシステム上割り当てることで実現されています。
ここではハードディスク追加のみを話題にしましたが、同様にCPUやメモリなども追加の対象になります。
こういう、「必要なリソースをボタン一発でサクっと追加できる」ってのが本来のクラウドです。
クラウドの劣化した意味:単にネットワークに繋がっていること
次に、超テキトーに使われちゃってる「クラウド」の意味。それは、「ネットワークに繋がっていること」です。単に「ネットワークに繋がっていること」を指して、しばしば「クラウド」の文字が使われてしまっています。
例えば、クラウド対応ネットワークカメラなんかに使われてる「クラウド」の意味は、単に「ネットワークに繋がっていること」しか指していないですね。でも、ネットワークカメラって元々ネットワーク上に乗ってるからネットワークカメラって呼んでるんでしょ。そこにクラウドって付けても意味ないじゃん。販売元もそれを感じているのか、若干「クラウド」の文字が控えめですね。
あとは、クラウド対応デジカメとか。これは撮った画像が自動的にネットワーク上のストレージに送られる便利機能を指してクラウドと言っています。それは確かに便利だけど、本来のクラウドの意味である「自由自在に拡張できる」っていう機能はここにはありません。これが、保存先のストレージをガンガン増やせるよーって機能があったら、まあクラウドと言ってもいいかもしれない。でもそれもない。
あ、なお、上記リンク先のデジカメは販売元のパナソニックは「クラウド」とは言ってなくて、記事を書いてる記者さんが勝手に「これはクラウドだ」って判断して書いてるみたいなんだけどね。まあ勘違いクラウドの一例ということで。
詳しい意味はこちらを参照
なお、クラウドの詳しい定義を事細かく知りたい方はNIST(アメリカ国立標準技術研究所)のページを見ると良いでしょう。まあ、私は読んでないけどね。だって、どうせもう既に色んな人が勝手に色んな意味付けをして使ってるから、いくら権威ある機関が「これはこういう意味だ」って言っても、なんというか焼け石に水だと思うんだよね。
CloudとCrowd
あと、上記の二例の「クラウド」は英語で「Cloud」と書く「雲」の意味の「クラウド」のことです。英語では「Crowd」という単語もあり、これも日本語では「クラウド」と発音しますが、「Cloud」と「Crowd」は完全に別の言葉です。「Crowd」の方は本来の意味は「群衆」のことで、「クラウドソーシング」のクラウドは群衆のクラウドです。「たくさんいる人に向かって仕事を投げ込む」ってイメージでしょうか。まあともかくCloudとCrowdは別の意味です。
そういうわけで、もうなにがなんだかわかんなくなっちゃってるクラウドって言葉。個人的には、一切使わないようにしてますです。
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