タックスヘイブンが提供する、一つの社会的メリット – SPCの機能
2016年4月、「パナマ文書」の問題で、タックスヘイブンに注目が集まった。その中で、「大企業はタックスヘイブンを使って税金逃れをしているから、ずるい。」という批判が多く発生した。
しかしタックスヘイブンは、社会に多くのメリットを与えている側面もある。その点を知らずに批判するのは、あまり建設的ではないだろう。この記事では、何も知らない人向けに、タックスヘイブンが存在することの社会的メリットについて、基本的なところを説明したいと思う。
目次
まとめ
最初にまとめを書いておく。
- タックスヘイブンは悪い文脈で語られることが多いが、普通の商売にも多数使われている。
- タックスヘイブンは、商売の元手を出しやすくする効果があり、経済を活性化させている。
- タックスヘイブンが邪悪なものかどうかを総合的に判断するのは、かなり難しそうだ。
そもそもタックスヘイブンとは?
タックスヘイブンは、日本語で書くと「租税回避地」だ。要するに、税金がかからない国や地域のことだ。日本では、大企業の場合は法人税が利益の約40%かかる。それが、タックスヘイブンだとゼロだったり、ものすごく低率だったりする。大企業にとってはすごくお得な話だ。
タックスヘイブンとして有名なのは、なんといってもケイマン諸島だ。位置はキューバの近く。また、パナマ文書で大きく名前が出たパナマもタックスヘイブンだと認識されている。パナマもキューバに近く、カリブ海に面した位置にある。
なぜ無税にするのか?
タックスヘイブンの国は、なぜ税金を取らないのだろうか?それは、貧乏だったからだ。
自国内の産業が発達していない貧乏な国が貧困から脱出するには、地道に産業を育てるのが、おそらくまっとうな道だろう。しかし、そういった政策は多くの場合時間がかかるし、競争相手もたくさんいるので、うまくいくかどうかはわからない。
しかし、貧乏な国が一発逆転を狙える政策がある。それが、タックスヘイブンだ。「この国では法人税を取りません」と自国内の法整備をすれば、それだけで確実にタックスヘイブンになれる。タックスヘイブンになると、世界中から企業が集まってくる。貧乏な国にとっては素晴らしいことだ。
タックスヘイブンになると、その名前の通り税金を取らないことになるので、タックスヘイブンの国はどうやってお金を稼ぐのか?ということが気になるだろう。タックスヘイブンの国々は、会社の設立手数料や維持手数料の名目でいくらかの税金っぽいものを取るのが一般的らしい。その金額は、信頼度の低い情報ソースで恐縮だが、Wikipediaの記述によればケイマン諸島の場合で年間1000USD~1750USDだそうだ。日本円で言えば、概ね10万円~17.5万円ということだ。少ない金額ではあるが、産業が何もない国にとっては、ありがたい収入のはずだ。
参考:ケイマン諸島の経済 - Wikipedia
つまり、タックスヘイブンという政策は貧しい国の最後の手段なのだ。何も持っていない国でも、法整備さえすれば企業を呼び込み、いくらかの収入を得ることができる。だから、世界に貧しい国がある限り、当面はタックスヘイブンの国は出現し続けるだろう。
企業側の税金上のメリット
タックスヘイブンに会社を作る側から見ると、タックスヘイブンに会社を作る第一のメリットは、当然ながら税金が安いことだ。
例えば、年間10億円の利益を上げる会社が日本にあった場合は、法人税が10億円の約40%で約4億円かかる。しかし、その会社がタックスヘイブンにあった場合は、法人税はほとんどゼロだ。会社を維持するために必要なコストは、上記のケイマン諸島の例で言えば、10万円とか20万円とかで済む。税金が4億円かかるはずが20万円で済むのだから、企業側としては当然、タックスヘイブンを使うということが選択肢に入ってくる。
タックスヘイブンとSPC
タックスヘイブンを使うと、「SPC」という種類の会社が作れる。SPCとは、英語で書くとSpecial Purpose Company。日本語では特別目的会社と呼ばれる。
SPCの簡単な例
不動産賃貸業を営む会社を例に取って考えてみよう。日本の会社が日本のビルを持つ場合、出た利益の約40%が税金で持っていかれる。しかし、そのビルをタックスヘイブンに作った会社の所有物にした場合、税金はほとんどゼロだ。
そうなると、日本からタックスヘイブンに「形だけの会社」を作り、その会社に不動産を持たせ、税金を回避するという手法を思いつく。
現在は日本でもSPCを作れる
タックスヘイブンを放置すると、日本国内で課税できたはずの企業の利益がどんどん国外へ逃げて行ってしまう。しかし、タックスヘイブンは日本ではない他の国の政策の話なので、日本政府が強制的にタックスヘイブンをやめさせることはできない。
そこで日本はどうしたかというと、SPCを日本国内でも作れるようにした。平成10年6月15日に法整備されている。
参考 日本政府のサイト:資産の流動化に関する法律(旧名:特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)
日本でもSPCを作れるようにしたというのは、要するに、日本国内でタックスヘイブンみたいなことができるようになったということだ。SPCと認定されるように会社を作り運用すれば、日本国内であっても、そのSPCに関してはほとんど税金を払わなくていいのだ。
そんなことしちゃって税収は減っちゃわないのか?と心配になるかもしれない。しかし、会社が丸ごとタックスヘイブンに逃げてしまうよりも、日本国内にSPCを作ってもらった方がマシだ。理由は、SPCに付随した人や商売に関連する税金は取れるからだ。SPC自体の法人税をあきらめる代わりに、その周辺からはキッチリ取ろうということだ。
例えば、SPCが持つことになる資産の管理をする人の給料。SPCの資産管理をする人は、タックスヘイブンにSPCが設立された場合、そのタックスヘイブンの地で雇われることになる可能性が高い。だから、その人の給料に対する所得税は、日本が徴税することはできない。しかし、SPCが日本にできれば日本にいる人が働く可能性が高いので、その給料に対する所得税を徴税することができる。その分、マシということだ。
タックスヘイブンがあるから日本でSPCを作れる
そのようなわけで、現在はSPCを作るために、必ずしもタックスヘイブンは必要ない。しかし、タックスヘイブンがなければ、日本にSPCを作るための法整備はなされなかったと思われる。だから、タックスヘイブンとSPCは表裏一体の関係なのだ。
このSPCは現在、様々な商売に使われており、日本の経済に完全に組み込まれていると言っていいだろう。具体例にはこの記事の後ろの方で触れる。
なお、このSPCは、作り方や機能の微妙な違いによって、SPV・SPE・TMK等とも呼ばれる。様々なニュースなどではそれらの言葉で出てくることも多いが、これらはだいたい同じものなので、この文章で初めてSPCについて知った人はその違いは意識しなくて良い。
SPCの特長
SPCを使うと、出資者を集めやすくなる。他人から商売の元手を出してもらいやすくなるということだ。その結果、新しい商売が生まれやすくなる。
SPCは、下記のような特長を持つ会社だ。
- 行う事業が明確
- 開発元が倒産しても大丈夫
- 税金がすごく安い
それぞれ、順に説明していこう。
行う事業が明確
SPCは行う事業が明確だ。
SPCは、行う事業を定款などで明確に定めている。そのため、当初の事業と違う異業種に進出することはできない。また、後述するが、税金を安くするための条件として利益のほとんどを出資者への配当に回すことが定められている。つまり、利益の一部分を規模拡大・異業種進出のための資金とすることが基本的にできない。
つまり、SPCは、一回作られたら同じ商売をずっと続けるのだ。不動産をSPCに持たせて不動産賃貸業を営んだり、貨物船をSPCに持たせて船を貸す商売を長期間続けたりするのが典型的な例だ。
参考:信託の倒産隔離性|スタンダード・プアーズ
開発元が倒産しても運営に影響がない
開発元が倒産しても運営に影響がない。例えば、ある会社Aがある事業を、子会社Bを設立して運営していたとする。その状態でAが倒産した場合、元子会社Bの株式は小分けにされて売られ、Bの運営は新しい株主の思惑で大きく左右されることになる。そうなると、外部からBへ出資した人は大きな影響を受け、損をするかもしれない。
外部から投資する側はその可能性を事前に考慮して、Bへの投資にネガティブな判断をする。その結果、Bへの出資が集まらず、Bの事業は開始できないかもしれない。
しかし、Aが子会社BをSPCとして作るプランにしておけば、Aが倒産しても大丈夫だ。BがSPCとして作られている場合、そもそもAはBに対して議決権を持たない。BがSPCであれば、AからBへの出資しても、Aには純粋に金銭的な配当を受ける権利しか発生せず、Bの経営方針に口を出すことはできないようになっている。もしAが倒産したら、Aの出資した分の受益権は第三者に渡るが、その第三者がBの経営に口を出すことはできない。Bは以前と同様の経営を行い、淡々と利益を配当していくだけである。
つまり、Aが倒産しても、Bは当初の予定通りに、何事もなかったかのように運営され、利益を出し続ける。そのため、Bへ最初に出資する人は、Aが倒産するリスクを考えなくて良い。これは出資者にとってメリットだ。
このSPCの機能は、関係者が倒産しても大丈夫、という意味を込めて「倒産隔離」と呼ばれている。上記のような「口出しする権利」についてだけではなく、SPCでは様々な「開発元が倒産しても大丈夫」な機能を備えている。が、多すぎるのでここでは触れない。
参考:図解入門ビジネス最新不動産ファンドがよ~くわかる本
税金がすごく安い
SPCは税金がすごく安い。さっきも書いたが、SPCの場合、利益のほとんどすべてを出資者に配当すれば、SPCとしての税金はほとんどゼロで済む。これがもし日本国内に普通に作った子会社なら、所得税率が、だいたい40%かかる(法人税)。
ただし、SPC自体に対する税金はほとんどゼロだが、SPCから給料をもらう人には給与所得に対する所得税がかかるし、SPCに出資して配当金を受け取る人には配当金の収入に対して税金がかかる。
SPCによって、商売の元手を集めやすくなる
行う事業が明確で、関係者が倒産しても事業の運営に影響がなく、税金が安い。これは、出資者にとって大きなメリットだ。
具体例
秋葉原にある秋葉原UDXを例に取ろう。秋葉原UDXは、秋葉原駅前にある22階建てのビルだ。大きなイベントスペースがあり、様々な催し物が開かれている。行ったことのある人も多いだろう。下記写真の奥のビルが秋葉原UDXだ。
この秋葉原UDXは、SPCである「UDX特定目的会社」が運営している。
参考:プロジェクトスキーム | 秋葉原UDX
「UDX特定目的会社」を作ったのは、NTT都市開発だ。
参考:秋葉原UDX完成直前のプレスリリース|NTT都市開発
「UDX特定目的会社」へは、組成当初、NTT都市開発の他に、鹿島建設が出資している。下記プレスリリースによれば、それぞれ70億円づつ出資していたようだ。
特定子会社の異動に関するお知らせ|NTT都市開発
また、出資の他に、複数の銀行による融資も受けている。
都市再生ファンド 秋葉原UDXのケース|DBJの金融サービス|日本政策投資銀行(DBJ)
総工費は、隣のダイビルと合わせて1150億円。UDX単体の事業費は公表されていないようだが、超ザックリ言えば半分の575億円くらいと見積もっても良いだろう。なお、延べ床面積で比べると、UDXが161,676m2、ダイビルは50,289m2と、UDXの方が広い。
秋葉原クロスフィールド事業費|朝日新聞ニュース
NTT都市開発が秋葉原UDXのために出したお金は、さっき書いた通り70億円。70億円の元手で、500億円を超える事業を行ったわけだ。鹿島建設という第三者の出資や、様々な銀行融資を受けられたのは、SPCを作り、行う事業を明確にしたおかげと言える。
さっき書いた、SPCの3つのメリットをもう一度挙げよう。
行う事業が明確
行う事業が明確。もしNTT都市開発が自分の持ち物や子会社の持ち物としてUDXを開発しようとしたとすると、出資者から見れば、UDXに対して投資したいのに、NTT都市開発の経営方針によって他の事業に資金が使われる可能性を考えなければならなかった。SPCを作ることで、そういった可能性を切り離し、UDX自体が儲かるかどうかだけを考えれば良いようにしたわけだ。
関係者が倒産しても事業の運営に影響がない
関係者が倒産しても事業の運営に影響がない。もしNTT都市開発が自分の持ち物や子会社の持ち物としてUDXを開発したとすると、NTT都市開発が倒産した場合、UDXの運営会社に対する議決権は全くの第三者へ移ってしまう。その結果、運営方針は大きく変わるかもしれない。出資者から見れば、UDXに対して投資したいのに、NTT都市開発の倒産リスクを考えなければならなかった。SPCを作ることで、そのリスクを切り離し、UDX自体が儲かるかどうかだけを考えれば良いようにしたわけだ。
税金がすごく安い
税金がすごく安い。もしNTT都市開発が自分の持ち物や子会社の持ち物としてUDXを開発したとすると、UDXの儲けの約40%は税金で持って行かれる。UDXはSPCが運営しているので、UDXの儲け自体にかかる税金はほとんどゼロだ。
タックスヘイブンがあったから秋葉原UDXが完成した
タックスヘイブンが存在し、SPCが作れるからこそ、出資者が現れやすくなり、秋葉原UDXを作ることができたのだと言える。
もしかしたら、SPCがなくてもUDXと同じようなビルは建ったかもしれない。でもSPCがない場合、出資者から見れば、投資対象が行う事業は明確でないし、関係会社の倒産リスクを見積もらなければならないし、税金も高かったことになる。投資の意思決定は遅くなり、コストも大きくなったはずだ。その結果、UDXの完工は遅くなったり、利用料が高くなったりしたかもしれない。
タックスヘイブンを使うメリットとは
タックスヘイブンが存在し、SPCを作れたことによるそれぞれの立場のメリットは、上記例についていうとこんな感じだ。
- NTT都市開発は、集めづらい資金を集めることができ、秋葉原UDXを建設して儲けることができた。
- SPCへの出資者は、単純化されたリスクのもとに投資判断をして出資し、配当金で儲けることができた。
- 一般の人は、秋葉原UDXに遊びに行って楽しい時間を過ごすことができた。
もしタックスヘイブンが存在しなければ、SPCは存在できず、秋葉原UDXは建設されなかったか、もし建設されたとしても完成が遅くなったり、コストが大きくなって入れるテナントが制限されただろうという予想が成り立つ。
有名なSPC使用例
タックスヘイブン・SPCは様々な業種で使われている。上記の秋葉原UDXの他に、有名なものを2つ挙げよう。
仙台空港
仙台空港は、2016年7月1日に仙台空港の運営に特化したSPCに譲渡された。このSPCへの主な出資者は東急(東京急行電鉄株式会社)で、議決権比率は42%だ。また、東急系の他の会社も出資をしており、それらを全て合計すると55%になる。残りの45%の資本は、SPCを作ったおかげで呼び込めたと言える。
仙台空港特定運営事業等に関する実施契約の締結について |東急線沿線ニュース|東急電鉄
もしSPCを使わなければ、空港運営の資金が十分でなく、今よりも運賃が高くなったり、空港内の売店が貧素になったりしていたかもしれない。SPCがあるおかげで、仙台空港は運賃が安く、また快適な場所になったと言えるだろう。
バジリスク
マンガで「バジリスク」という作品がある。忍者をテーマにしたマンガだ。これのアニメ化がなされる際、SPCが使われた。
バジリスク ~甲賀忍法帖~ vol.1 (初回限定版) [DVD]
通常、アニメ制作で多いのは「製作委員会方式」だ。製作委員会とは、アニメ制作の関係社の「緩い集まり」だ。製作委員会には法人格がない。製作委員会の資産や負債は、参加している関係社に直接的に帰属する。製作委員会の関係社は無限責任を負う。そのため、この方式だと、外部からの資本を呼び込みづらかった。
参考:コンテンツ産業における資金調達の現状と課題 - 経済産業省
しかし、バジリスクのアニメ化の際には製作委員会方式ではなく、SPCが使われた。「アニメファンド! バジリスク匿名組合」という組合を通してSPCへ出資する形が取られ、個人投資家など、様々な立場の人からの出資が集まった。
参考:初のアニメファンドで資金調達 個人向けに1口5万円から - ITmedia LifeStyle
通常であれば、製作委員会方式が使われ、アニメの直接的な関係者でないと出資できなかった。それに対し、SPCを使うことで「バジリスクがヒットするかどうか」だけを考えれば良くなった。リスクが明確化し、第三者が出資しやすくなったわけだ。その結果資金が集まりやすくなり、バジリスクのアニメを製作することができた。SPCを使わなかったら、もしかしたらこのアニメは作られなかったか、もしくは作られても品質が悪く作画が崩壊していたり、DVDの値段が高くなったりしていたかもしれない。
なお、この「アニメファンド! バジリスク匿名組合」は、投資成績としては失敗に終わった。投資家に戻ってきた金額は、出資額に対して76.9%だ。つまり、投資家は23.1%の損をしたことになる。不幸な結果ではあるが、SPCを使ったおかげで、損失は投資家がかぶり、アニメ制作会社は難を逃れた形になる。これもSPCの威力と言える。
確かに金持ち優遇だが、働く人にもメリットがある
上で書いた通り、SPCは税金を減らす効果がある。SPCを作る技術や金銭的余裕があるのは大企業や金持ちなので、SPCには金持ち優遇の側面は確かにある。しかしその一方で、タックスヘイブンがあり、SPCが存在するおかげで、新たな商売が生まれたり、商売が大きくなったりして、雇用も発生する。また、その新たな商売で一般庶民の生活は便利になったり豊かになったりする。
私の個人的な感覚としては、金持ちがさらに金持ちになることに嫉妬する気持ちもあるが、それよりも、雇われ先が多くなって雇用が安定することの方が重要だ。だから、もしタックスヘイブンが消えるとなったら非常に不安を感じる。
もしタックスヘイブンが無くなれば、大企業の実効税率は上がるが、それと同時に全体の納税額は減り、秋葉原UDXや仙台空港やバジリスクのアニメは、無くなるか品質が悪くなる。たぶん、そういう社会にしたい人は少ないだろう。
ちなみに
ちなみに、SPCの絡む取引は、会計知識としてかなり高レベルな知識と位置付けられている。たとえば、日商簿記検定試験だと1級にならないと出てこない。3級試験の合格率が約40%、2級は約30%、1級は約10%だ。会計を志している人の中でも、SPCについてきちんと理解している人は1~2%しかいない、とも言える。一般の人では、この仕組みを知っている人は、たぶんほとんどいないだろう。
しかし、SPCの存在意義や概略、SPCとタックスヘイブンの関係は、このページの文章で概ね理解できると思う。高レベルな知識と位置付けられている割に、そんなに難しい話ではない。
SPCは大きな事業ではよく使われる仕組みだ。我々一般市民でも、日常の中で、SPCが使われている事業に触れる機会は多いと思われる。この文章を読んでいる人の中にも、秋葉原UDXに遊びに行ったり、仙台空港を使って旅行をしたり、バジリスクのアニメを見たりしたことがある人はたくさんいるだろう。しかしSPCという仕組みの存在は、あまりにも知られていないように思う。ここに書いた内容だけでも知っておくと、頭が良いと思ってもらえるかもしれない。
著者の知識とスタンスについて
長々と書いてしまったが、最後に私のスタンスについて書いておく。
著者の知識
この文章の著者である私の主な職種は「会計関連のシステムエンジニア」であり、タックスヘイブンの直接的な業務は一回もやったことがないし、会計も専門ではない。10年ほど前、1年間ほど不動産会社で経理をやったことがあり、その際に関連会社としてのタックスヘイブン・SPCの取引について何回か処理をした程度だ。
なので、誠実に書いているつもりではあるが、完全に正しい内容だと100%の保証はできない。もし、実際にタックスヘイブンを活用したいという人がいたら、そういう人は、専門家に相談して欲しい。
一方で、この記事に書いている文章は、専門家ではない私であっても知っている基本的なレベルの内容であるとも言える。
著者のスタンス
また、私は、タックスヘイブンが法的・倫理的に悪いと判断されるような用途でどれくらい使われているのかは全く知らない。そもそも善悪の線引きは難しいし、利用実態の調査も困難だろう。だからタックスヘイブンが総合的に見て良いものか悪いものなのかは判断できない。この記事はタックスヘイブンを擁護しているように読める内容になっているが、これはタックスヘイブンの機能の一面を説明したのみであることを頭に入れておいていただけるとありがたい。
ネット上に多数流れたニュースサイトなどでの批判的な記事を読んで、批判のための前提知識がかなり不足しているんじゃないかと感じることが多かった。だから、情報提供のつもりでこの記事を公開した。
タックスヘイブンは社会的にメリットを与える側面のある存在である
このように、タックスヘイブンが存在し、SPCが存在しているおかげで、商売の元手が出やすい仕組みが出来上がっている。この点において、タックスヘイブンは社会に大きなメリットを与えている。
もちろん悪用する人もいるだろう。悪用している人の比率が全体のどれくらいなのかは、私は知らない。しかし、タックスヘイブンを批判するのであれば、ここに書いたような基本的な使い方とメリットくらいは知っておいたほうが良いだろう。