「部門別BS」に意味はあるか
一般に、管理会計というとまずは「PL(損益計算書)」を作ることが最も優先されます。そして、PLの世界だけで完了させてしまうことが多いです。
しかし、財務会計では「PL(損益計算書)」と「BS(貸借対象表)」を作ります。それならば、管理会計として「PL」だけではなく「BS」を作る必要はないのでしょうか。
お金に"色"は無い
管理会計の世界では様々な切り口でPLを作ることが多いです。部門別のPL、製品品種別のPL、事業別のPL、などなど。それならば、「部門別のBS」って、どんなものか考えてみましょうか。
これを具体的に考えていくと、なかなか悩ましいところが出てきます。例えば、固定資産のように形のあるものなら、会社内のどこの部署が管理して、どの製品のために使っているものか、ということはまあわかります。
それでは、現金はどうでしょうか。例えば、部門Aが売り上げた現金は部門Aの現金、と言えそうですが、その入ってきた現金残高を部門Bの支払いのために使う、というのは日常の風景です。そのような処理をした場合、部門Bは部門Aからお金を借りたことにする・・・ということはできそうです。ならば、もうちょっと踏み込んで考えて、部門Aが100万円を売り上げてお金を回収し、部門Cは200万円を売り上げてお金を回収し、銀行口座残高が300万円になったとしましょう。そしてその300万円の中から部門Dの支払いを60万円したとしたら、部門Dは部門Aから20万円、部門Cから40万円を借りたことにする・・・。まあ、できなくはないでしょう。ですが、こうなってくると「この現金はどの部門の現金か」ということを管理する、という新たな面倒な作業をしてくれる人を雇いたくなります。つまり、厳密に部門別BSを作ろうとすると、かなり管理コストがかかりそうです。
そもそも、何を知りたくて部門別BSを作るのか
そもそも部門別BSを作る意味ってなんでしょうか。財務会計で作る、会社全体としてのBSは法に定められた方法で作る必要がありますが、作らなくても良い部門別BSを作る意味とはなんでしょう。
これは私の考えですが、結局突き詰めて考えれば、資本コスト(借入金の利息や株主への配当金など)を把握・管理するためだと思います。例えば部門AのBSが巨大で、貸方(BSの右側)の多くを借入金で賄っているとすれば、その借入金を減らすためには借方(BSの左側)のどこを削るべきか?ということを考えるためには役に立ちそうです。
でも、1円単位で把握する必要はないでしょ?
もし部門別BSを作る目的が部門別の資本コストの把握と管理なら、「BS」まで作る必要はないと思います。BSの金額のうち、現金や預金が締める割合は高くありません。それなら、一般に金額の多い固定資産や売掛金の部門別残高だけを管理すれば十分だと思います。BSの金額を多く占めるものだけを監視し、削減を促せば良いでしょう。
そんなわけで、「部門別BS」は、資本コストが大きければ大きいほど作る必要は増し、そうでもなければ必要性は薄い、そして一般的には要らない。という認識でいいと思います。