倒産間際の会社の債務管理の難しさ

私は、倒産間際の会社の経理をやっていたことがあります。倒産間際の会社の経理は、ちょっと大変です。解説しましょう。まあ読んでも役に立つ人は少ないでしょうが(笑)、お暇でしたら読み物として読んで下さい。

次々に分裂していく債務

倒産間際の会社では、債務が次々に分裂していきます。どういう事かというと。

例えば、10万円で商品を仕入れたとしましょう。その時の仕訳は、

仕入 10万円 / 買掛金 10万円 ・・・A

で、普通だったらこの買掛金10万円を後で支払います。

買掛金 10万円 / 預金 10万円 ・・・B

Aの仕訳とBの仕訳で、買掛金は相殺されて消えますよね。これが普通です。でも、倒産間際の会社ではどんなことが起こるかというと、

「お金が無くて払えないんです。すいません・・・」

「え、、じゃあいくらなら払えるの?少しだけでも払ってよ!」

こういう会話を経て、例えば2万円だけ支払ったとします。

買掛金 2万円 / 預金 2万円 ・・・C

そうすると、Aの仕訳で10万円発生した買掛金は、Cの仕訳で2万円だけ相殺されて、8万円残っていることになります。

そして、ここで困ります。普通、制度会計のシステムではAの仕訳で発生した買掛金は、Bの仕訳のように一括して支払われることを想定して作られています。もちろん金額が大きければ数回に分けて支払う事もありますが、基本的にレアケースです。レアケースなので、システム上で管理しなくても経理部の社員の頭の中の記憶だけで大抵は処理が可能です。

ですが、倒産間際の会社では、数万円や数千円の債務でさえ、上記のように分裂していくのです。私の経験した会社の場合、その数は1000を超えました。Aの仕訳が1000個くらい並んでいて、その下にCみたいな仕訳が2000~3000個くらい並んでいて、それらの全てについて、個別に紐付け関係を把握していなければならなかったんです。その時点で「無理。」と思い、私は転職活動のペースを速めました。

そんなわけで、倒産間際の会社の混乱の一例をお話ししました。これは作業として本当に大変だし、電話口では「払えません・・・」って何度も言ってどなられて謝らなきゃいけないし、有能な人はいち早く会社を去ってるしで踏んだり蹴ったりですが、なんとも言えない「祭り感」があって、かなりハイテンションで仕事をしていたのを覚えています。大変だけど変に楽しいです。「会社が倒産する!」となった時には、残って経験を積むのも悪くないですよ(笑)。

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