なんで出来損ないのクソシステムを使わなければならないのか
SIerの会社で、自社用のシステム開発をすることがありますよね。勤務管理のシステムとか。そして、有能な人材はみんな外向けの仕事で出払ってしまって、「残り物の人」で開発して、プロジェクトが失敗しちゃうってケースがよくあるように思います。で、そうやって出来上がってしまったクソシステム、捨てちまえばいいのに無理矢理使うことが世の常だと思います。そうなってしまうのは担当者のメンツを守るためであったり、現場の苦労を上役が理解していないためであったり、といった様々な理由があると思います。ですが、会計的な意味でも「クソシステムをどうしても使わなければならない」という理由があります。説明しましょう。
使わないと損失が明るみに出てしまう
上に書いた「クソシステムを無理矢理使わなければならない会計的な理由」とは、そのクソシステムを使わない場合は「減損処理」をしなければならないということです。
例えば、そのクソシステム開発に1億円をかけた場合。そのまま使っていけば、その1億円はソフトウエアという種類の「固定資産」になり、1億円を5年間に分けて、1年当たり2000万円づつ償却していきます。1年あたりの会計上の費用は2000万円です。
しかし、そのクソシステムを「使わずに捨てる」と決断した場合、開発にかけた1億円は、即、損失になります。つまり、開発が終わった年の会計上の費用は1億円になるわけです。
そうすると、その判断の違いによって、差し引き8000万円分の差が出るわけです。そして、その会社がよほど黒字を出していれば「使わずに捨てる」という決断もできるでしょうが、この8000万円のせいで黒字だった会社の収支が赤字に転落するような事態になったとしたら。経営者は何としても黒字に見せたいので「使えなくても無理矢理使え!!」と号令をかけます。
そんなわけで、会社の成績を良く見せたいがために、できてしまったクソシステムを捨てられず、使うことになるのです。
だったら使ってることにすれば・・・?
だったら、使ってることにして実際には使わなければいいじゃん!と思うかもしれません。が、それは通用しません。実際には使っていないのに固定資産に計上していると、監査で引っかかります。会計士は、そういう「ホントは使ってない固定資産」が発生しがちだということを監査の基礎知識として知っています。なので、固定資産が本当に存在して、本当に使っているかどうかということは必ず一つ一つチェックされます。最近では監査法人がSEを雇い、システムの内部まで確認して監査するということが普通に行われているので、その過程でバレてしまうでしょう。
そんな理由があって、経営者から見ると、クソシステムは捨てたくても捨てられないのです。