社長にとっての限界利益と店長にとっての限界利益の違い
以前限界利益(貢献利益)とは(ド素人向け)って記事を書きましたが、この限界利益は、立場が変われば概念も変わってきます。それについて少し説明しましょう。
目次
店長にとっての限界利益(貢献利益)
限界利益とは(おさらい)
上記の限界利益(貢献利益)とは(ド素人向け)の中で書いた例と同様に、ソーセージ屋さんをイメージして考えてみましょう。限界利益の基本的考え方は以前も書いた通り、下記のような感じです。
ソーセージを1本60円で仕入れて、店頭で焼いて1本100円で売りました。
このソーセージの限界利益は、100円 – 60円 = 40円です。
簡単ですね。売上から原価、つまり変動費である60円を引いた残りの40円が限界利益(貢献利益)です。店長からすれば、この40円がこのソーセージの貢献利益。
この店の固定費は?
ここで、もう一歩踏み込んで、このソーセージ屋さんのコストを考えてみましょう。店を構えているなら、家賃の支払いが必要ですよね。この家賃は、この店の店長にとっては固定費です。ソーセージを売っても売らなくても、毎月同じ金額だけ出ていきますもんね。また、店長の給料も固定費ですね。給与体系によって考え方は色々変わりますが、今回は毎月給料は変わらないとします。
ここで、説明のために下記のように仮定しましょう。
- この店では一ヶ月あたり10000本のソーセージを仕入れ、同数売る
- ソーセージの仕入れ値は60円、売値は100円
- この店の家賃は一ヶ月20万円
- この店の店長の給料は一ヶ月15万円
すると、この店の貢献利益の総額は
1本あたり40円 * 10,000本 = 40万円
ということで、40万円になります。
この店の営業利益は?
また、固定費である店の家賃と店長の給料を引くと、この店の営業利益になります。
40万円(限界利益) - 20万円(家賃) - 15万円(給料) = 5万円
ということで、この店の営業利益は5万円です。
社長にとっての限界利益(貢献利益)
ここで、視点を変えて社長にとっての限界利益を考えてみましょう。社長はたくさんの店を束ねています。例えば100店舗をチェーン展開しているとしましょう。ソーセージは1店舗・一ヶ月あたり10,000本、つまり100店舗で1,000,000本売っているとします。そして、商売は拡大基調にあるとします。
店舗費用が変動費になる
社長はこう考えます。
「来年はソーセージを2,000,000本売ろう。そうすると、店舗を増やさねばならないな・・・」
店舗を増やす。つまり、社長から見れば店舗は増減するものなわけです。なので社長から見れば、店舗についての費用も変動費的な性格が強くなります。社長にとっては、店舗の家賃や店長の給料は、ソーセージの売上本数の拡大に伴って増えていく費用です。つまり、変動費です。
店の限界利益の数値が変わる
この視点で、上で書いた店の限界利益を考えてみましょう。上ではソーセージの仕入れ値が変動費で、家賃と店長の給料が固定費という考え方をしましたが、社長から見ればそれらは全て変動費です。つまりこの店舗の貢献利益は、
100万円(売上) - 60万円(仕入れ値) - 25万円(家賃) - 15万円(店長給料) = 5万円
ということで、この店の貢献利益は5万円ということになります。さっきの例ではこの店の貢献利益は40万円でしたから、全然違いますね。このように、前提条件によって貢献利益は様々に変わります。会社の状況によっても違うし、同じ会社内でも立場によって変化します。同じ商売をしていても、です。
商売の条件によっても変わる
さっき「社長から見れば、店舗の家賃や店長の給料は、ソーセージの売上本数の拡大に伴って増えていく費用なので変動費」と書きました。しかし、商売の条件によっても考え方は変わります。
例えば、日本の正社員は強い解雇規制で守られています。なので、一般的には正社員の給料は商売が縮小しても減らすことはできません。つまり固定費です。一方、派遣社員は簡単に切ることができます。商売が縮小すれば派遣社員の給料は削減することができます。つまり変動費です。
さっきの例では店長の立場を明確に記述しませんでしたが、この店長がもしこの会社の正社員なら、店長の給料を変動費に入れるのは間違いと言えるでしょう。商売が縮小しても削減できないのですから。逆に、この店長が派遣社員ならば変動費が適切と言えます。
管理会計の利益は注意が必要!
と、そんな感じで限界利益・貢献利益の値は、条件によって様々に大きく変化します。作表された帳票を見るときには前提条件をよ~~~く確認しましょう。
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