監査における意見差控とは何か
会計監査で、まれに「意見差控」という監査結果が出ることがあります。説明してみましょう。
「わからないから意見を出せない」
意見差控。株式投資をやっている人なら、なんとなく不穏な空気を感じるんじゃないかと思います。その感覚は正しいです。意見差控というのは、「マトモに会計やってないから監査できなかった」という結論に監査人が達したということです。「マトモに会計やってない」っつーことはその会社の財務諸表は信用できないということになるので、その会社への投資判断は基本的に不可能になります。
これは監査法人が出す「意見」の中では極めて厳しいものですが、これが出るのは非常に珍しいです。
監査法人が出す厳しい意見というと「継続企業の前提に関する注記」がよくありますよね。要するに潰れそうってことです。こないだスカイマークに継続企業の前提に関する注記が出たのでネタにして書かせて頂きました。
しかし、この「意見差控」というのはソレとはかなり毛色が違います。「継続企業の前提に関する注記」は、財務諸表の正確性は確認した上で、その会社が潰れそうだという意見を出すものでした。上記のスカイマークの例だと、スカイマークが作った財務諸表は正しいと認めた上で、その財務諸表から判断した会社の状態がひどかったので潰れそうだという意見を出したことになります。
でも「意見差控」は、会社の経理が作った財務諸表そのものの正確性が低くて、監査の根拠とするに足る資料が存在せず、監査意見が出せないという意味です。つまり、会社の状況が全くわからないということです。
「マトモに会計やっていない」ってのはどんなことかというと、例えば領収書をちゃんと保管してないとか・・・ですかね。まあ私はそういう会社に居たことがないのでわかりませんが(笑)、まあたぶんそういうことでしょう。経理部がまともに機能していないということです。
この「意見差控」、最近では2012年に山水電気に出ています。山水電気といえば、東証一部上場企業でありながら長く株価が1円と2円を行ったり来たりしていた会社です。2012年5月に倒産しています。
そんな感じです。かなりのレアケースですが、覚えておくとよいでしょう。