プロジェクト会計における費用認識

プロジェクトについて管理会計システムを作成しようとすると、必ずぶつかる壁があります。それは、プロジェクト進行中は財務会計上の費用が立たないという事です。

プロジェクト進行中は費用が立たない

左の図は、プロジェクトにおける売上・費用・仕掛品残高・仕掛品発生のイメージです。PL科目としては、左の図の売上(赤)と費用(オレンジ)のような発生の仕方になります。プロジェクト進行中はPL科目は何も発生せず、完工・検収時にプロジェクト全体の売上と費用が立って終わります。

しかし、当然製造者の給料等は毎月かかっています。その給料等はどのように扱われているかというと、BS科目の「仕掛品」として積み上がっていきます。例えば、2011年4月~2012年3月までのプロジェクトがあったとして、製造者の給料が一ヶ月200,000円だった場合、毎月の仕訳は下記のような感じになります。

仕掛品(BS科目) 200,000 / 預金 200,000

そして、この仕訳を、毎月積み上げていきます。

仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年4月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年5月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年6月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年7月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年8月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年9月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年10月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年11月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2011年12月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2012年1月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2012年2月
仕掛品 200,000 / 預金 200,000  ← 2012年3月

ここまでで、仕掛品は20万円*12ヶ月で240万円積み上がっています。
次に、2012年3月にこのプロジェクトの成果物が300万円で売れたとしましょう。すると、その時に切る仕訳は下記の2つになります。

預金 3,000,000 / 売上 3,000,000
↑売上が立って、代金が振り込まれてきた。

製造原価(PL科目) 2,400,000 / 仕掛品(BS科目) 2,400,000
↑仕掛品(BS科目)を製造原価(PL科目)に振り替えた。

財務会計上の仕訳は以上です。

財務会計上の費用認識は管理会計になじまない

財務会計としては上記のような仕訳の処理が正しいのですが、この費用認識の仕方は、経営者から見ると非常にわかりづらいです。なにしろ、プロジェクトが終わるまで費用がゼロなのです。しかしこれでは、それぞれのプロジェクトが順調にいっているのか否かがわかりません。経営者としては、仕掛金発生(上記図の水色)のイメージで費用を把握したいはずです。

ならば、どうするか。一つの解は、管理会計上の収支情報とは全く別に、毎月の仕掛金発生額を参考情報として帳票に埋め込んでしまうことです。管理会計システム上の正式な売上と費用としては、あくまで財務会計上の売上と費用(つまり売上が立った瞬間にドーンと立つ売上と費用)を使い、収支と無関係な参考情報として仕掛金発生額を示すのです。こうすると、管理会計システム上は普通に収支科目を管理するだけで済みますし、経営者はプロジェクトがうまく進んでいるかどうかをある程度判断することができます。例えば、製造者の残業が嵩めば、それだけ支払い給与が増え、仕掛金発生額も膨らむので、少なくとも「社員の残業が増えている。何かうまくいっていないことがあるのでは?」と想像することができます。

一つ言わせてくれ

話は以上ですが、一つ言いたいことがあります。

最後に書いた通り、社員の残業が嵩めば給料が増えて仕掛金が増えます。普通は。でも、社員にサービス残業させている会社の場合、いくら残業が嵩んでも仕掛金は増えません。そのため、プロジェクトの状況を把握することができません。つまり、社員にサービス残業させるという事はプロジェクト管理を放棄しているとも言えるのです。プロジェクト管理を放棄すれば、より残業時間は嵩みます。悪循環です。

つまり言いたいことは、社員にサービス残業をさせている会社の経営者は、プロジェクト管理を放棄した無能な経営者だという事です。サビ残代払えこのクソ野郎。

以上です。

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