原価確定の仕訳・小売業企業とプロジェクト遂行型企業の違い

原価確定の仕訳はこんな感じだって記事を書きましたが、その記事はちょこっと正確ではありません。いや、場合によっては正しいんですが、シチュエーションが限られるんです。

小売業とPJ遂行型企業の違い

上記記事は、小売業に関しては正しい記述です。月中の仕入れ額と、月初と月末の棚卸額をグシャっと合わせたのが原価。それは小売業に関しては正しい。一応、この記事でも仕訳を書いておきましょうか。

月初の棚卸の仕訳。

1-1.月初の棚卸の仕訳

借方 貸方
4月1日 仕入 150,000 / 繰越商品 150,000

月中の仕入の仕訳。

1-2.月中の仕入の仕訳

借方 貸方
4月5日 仕入 200,000 / 買掛金 200,000

月末の棚卸の仕訳。

1-3.月末の棚卸の仕訳

借方 貸方
4月30日 繰越商品 180,000 / 仕入 180,000

1-1~3をグシャっと集計して、4月の原価は、15万円+20万円-18万円=17万円です。これが小売業の場合。

プロジェクト遂行型企業の場合

それに対して、プロジェクト遂行型企業の場合、原価計算は全く違う感じです。プロジェクト遂行型企業というのは、受注型システム開発会社なんかがそれにあたります。量販するものではなく、発注者専用の何かを作って納品する形の商売をする会社。そのような会社の場合、その納品物に対する費用支出は支出時点では全てBS科目になります。勘定科目では、「未成工事支出金」なんかがよく使われますね。私のいるシステム会社でも、作成途中のシステムは基本的に「未成工事支出金」の勘定科目に溜まっていきます。なお、「未成工事」ってのが建設業を思わせますが、システム会社のシステムでも「未成工事支出金」の勘定科目はよく使われます。

仕訳はこんな感じ。例えば、あるプロジェクトに社員が一人従事してプログラミングとかをしているとしましょう。その場合、その社員の給与は下記のように一旦費用の給与の科目で切られたあと・・・、

2-1.社員に4月分給与を支払った。

借方 貸方
4月15日 給与 300,000 / 預金 300,000

下記のように未成工事支出金に振り替えられます。2-1と2-2の仕訳を合わせると、給与の勘定が打ち消し合って消えて、未成工事支出金が残りますね。

2-2.月末になったのでPJ費用を未成工事支出金に振り替えた。

借方 貸方
4月30日 未成工事支出金 300,000 / 給与 300,000

5月もそのPJをやったことにしましょうか。そうすっと、4月と同様の仕訳を切ることになります。こんな感じ。

2-3.社員に5月分給与を支払った。

借方 貸方
5月15日 給与 180,000 / 預金 180,000

ついでに、5月は出張に出たことにしてみましょうか。旅費も、一旦フツーに切られます。

2-4.社員が出張した。

借方 貸方
5月15日 旅費交通費 20,000 / 預金 20,000

そんで、5月末が来たらそのPJのために支出された金額を全て未成工事支出金に振り替えます。今回の場合は給与と旅費交通費ですね。

2-5.月末になったのでPJ費用を未成工事支出金に振り替えた。

借方 貸方
5月15日 未成工事支出金 320,000 / 給与 300,000
/ 旅費交通費 20,000

そして、この5月末で作ったシステムを納品して売上が立ったとしましょう。そうすると、まずは当然、売上の仕訳を切りますよね。

2-6.作ったシステムを売り上げた。

借方 貸方
5月31日 売掛金 1,000,000 / 売上 1,000,000

そして、次の仕訳が原価確定の仕訳です。プロジェクト遂行型の企業の場合、システムを売り上げた瞬間に、全ての費用が発生したかのように仕訳を切ります。

2-7.システムを売り上げたので未成工事支出金を費用化した。

借方 貸方
5月31日 給与 600,000 / 未成工事支出金 620,000
旅費交通費 20,000 /

この2-7の仕訳は、2-1、2-3、2-4の仕訳で切った費用と同じ費用が立っています。プロジェクト遂行型の商売の場合は、このように、そのプロジェクトで発生した費用は、全て売上が立った瞬間に発生したかのように仕訳を切るわけです。そして、この費用全体がこのプロジェクトの原価です。実際にキャッシュアウトしたタイミングでも費用の勘定科目で仕訳を切りますが、月次で未成工事支出金に振り替え、各月での費用はゼロになるわけです。

以上です。なおもちろん、上記の小売業型・プロジェクト遂行型の原価確定の仕訳は、会社ごとに一種類というわけではなく、同じ会社の中でも小売業型の商売とプロジェクト遂行型の商売が混在しているのが普通です。つまり、同じ会社の中でもやっている商売によって仕訳の切り方が違うわけです。覚えておきましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください