リース資産の仕訳の基本(ファイナンスリース)
以前、ファイナンスリースとはどんな取引かって記事を書きましたが、これの仕訳がまた面倒です。その面倒な仕訳の例を示しましょう。
ファイナンスリース取引の考え方
ファイナンスリースとは、上記リンクの記事で書きましたが、
「借主企業が、第三者が販売している商品を指定して、それをリース会社が買って、借主企業に貸し付ける」
というリースです。そしてさらに、
「途中でリース契約をやめる場合はリースした物品を借主企業が買い取る」
という条件が付いています。
それって「リース」っていうの?結局買わなきゃいけないんでしょ?
と思う方がたくさんいると思いますが、その感覚は正しいです。結局、お金の流れとしては、
「借主企業がリース会社からお金を借りて商品を買った」
のと同じような感じになります。なので、ファイナンスリースの場合、税法上は買ったのと同じような扱いで仕訳を切るように、平成19年度の税制改正で決まりました。
ファイナンスリースではない普通のリースの仕訳
まずは、ファイナンスリースではない、普通のリースの仕訳を書いてみましょう。こんな感じです。想定条件は以下の通り。
- リース期間は2012年4月~2013年3月
- リース料は一ヵ月10万円
※記述を簡単にするために1年間にしましたが、リースは一般にもっと長い期間行います。
で、仕訳は以下の通り。
2012年4月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年5月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年6月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年7月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年8月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年9月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年10月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年11月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2012年12月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2013年1月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2013年2月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 | ||||
2013年3月 | リース料 | 95,238 | / | 預金 | 100,000 |
仮払消費税 | 4,762 |
これだけです。楽勝ですね。毎月、請求書に載ってる金額を支払って、リース料として計上すれば良いだけです。
ファイナンスリースの仕訳
対して、ファイナンスリースの仕訳はクソめんどくさいです。一連の仕訳を説明しましょう。
ファイナンスリースの仕訳の考え方としては、「ファイナンスリースは、お金を借りて、借りたお金で資産を買って借金を返すのと実態はほとんど同じ」なので、仕訳も実態に近づけた、ということです。まずは、ファイナンスリースが始まった時の仕訳。なお、細かい金額になっていますが、この金額の算定については後で説明します。また、上でも書いた通りリース開始時に「資産を買った」とみなすので、仮払消費税も計上します。
借方 | 貸方 | ||||
2012年4月 | リース資産 | 1,099,512 | / | リース債務 | 1,154,488 |
仮払消費税 | 54,976 |
で、毎月お金を支払っていくわけですが、この支払の仕訳がめんどくさいです。というのも、ファイナンスリースは「お金を借りて、借りたお金で資産を買って借金を返す」という処理とみなすので、借入金の返済の仕訳と同様になります。
しかも、リースなので支払金額は毎月同じです。支払金額が毎月同じで借金を返済していくということは、毎月、支払の元金分の金額と利息分の金額が変化することになります。こんな感じです。なお、下記表はリース債務の金利が年利6%と仮定しています。毎月、リース債務の残りに利率をかけて一ヵ月分の利息を計算し、支払総額から利息を引いて、残りの金額分だけ元本が減った、と認識します。
債務 | 利息 | 支払 | 支払元金部分 | 支払利息部分 | |
2012年4月 | 1,161,898 | 5,809 | 100,000 | 94,191 | 5,809 |
2012年5月 | 1,067,707 | 5,338 | 100,000 | 94,662 | 5,338 |
2012年6月 | 973,045 | 4,865 | 100,000 | 95,135 | 4,865 |
2012年7月 | 877,910 | 4,389 | 100,000 | 95,611 | 4,389 |
2012年8月 | 782,299 | 3,911 | 100,000 | 96,089 | 3,911 |
2012年9月 | 686,210 | 3,431 | 100,000 | 96,569 | 3,431 |
2012年10月 | 589,641 | 2,948 | 100,000 | 97,052 | 2,948 |
2012年11月 | 492,589 | 2,462 | 100,000 | 97,538 | 2,462 |
2012年12月 | 395,051 | 1,975 | 100,000 | 98,025 | 1,975 |
2013年1月 | 297,026 | 1,485 | 100,000 | 98,515 | 1,485 |
2013年2月 | 198,511 | 992 | 100,000 | 99,008 | 992 |
2013年3月 | 99,503 | 497 | 100,000 | 99,503 | 497 |
(2013年3月分 支払い後) |
0 |
上記計算に基づいて仕訳を切ると、以下のようになります。
年月 | 借方 | 貸方 | |||
2012年4月 | リース債務 | 94,191 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 5,809 | / | |||
2012年5月 | リース債務 | 94,662 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 5,338 | / | |||
2012年6月 | リース債務 | 95,135 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 4,865 | / | |||
2012年7月 | リース債務 | 95,611 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 4,389 | / | |||
2012年8月 | リース債務 | 96,089 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 3,911 | / | |||
2012年9月 | リース債務 | 96,569 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 3,431 | / | |||
2012年10月 | リース債務 | 97,052 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 2,948 | / | |||
2012年11月 | リース債務 | 97,538 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 2,462 | / | |||
2012年12月 | リース債務 | 98,025 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 1,975 | / | |||
2013年1月 | リース債務 | 98,515 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 1,485 | / | |||
2013年2月 | リース債務 | 99,008 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 992 | / | |||
2013年3月 | リース債務 | 99,503 | / | 預金 | 100,000 |
支払利息 | 497 | / |
めんどくさいですねー。こんなの毎月計算してたらゲロ出ちゃいますね。でもご心配なく。まともなリース会社であれば、3.の表のような毎月の元金・利息の金額の表は、頼めば送ってきてくれます。最近は頼まなくても送ってきてくれるかな。なので、数字は毎月変動してめんどくさいですが、細かい金額の計算は、大抵の場合は借主側がやらなくてもOKなようになっています。
で、これでファイナンスリースの仕訳は終わりかというとまだあります。リース資産を償却しなきゃいけません。リース資産の償却は、特殊な事情が無ければリース期間全体にわたって行います。今回であれば1年ですね。2.で計上したリース資産を、固定資産と同様に償却します。
2012年4月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年5月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年6月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年7月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年8月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年9月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年10月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年11月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2012年12月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2013年1月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2013年2月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
2013年3月 | リース資産償却費 | 91,626 | / | リース資産償却累計額 | 91,626 |
これでやっと、リース資産にまつわる仕訳は終わりです。めんどくさかったですね。
あと、2.で計上したリース資産の金額の根拠ですが、これは支払うリース料と金利の関係で決まってきます。「毎月10万円支払、金利は年利6%」ということが決まると、3.の表の金額が決まります。そして、3.の表の最初の債務の金額から消費税分を引いた金額がリース資産の簿価となるわけです。
ただ実務的には、この簿価もリース会社から資料が送られてきたり、契約書に明記されていたりするはずなので、金額算定で困る場面はあまりないでしょう。
はー、書いてて疲れた。リース資産は本当に面倒です。でも、面倒ってことは、SEとしてはメシの種になるということですから、是非とも理解しましょう。
経理初心者です。とても分かりやすい内容でありがたく読ませていただきました。今対応中のファイナンスリース案件について、お尋ねします。
月額リース料の他、初期費用(一時払い)が発生するもので、これもリース資産とするということです。この場合、
初期費用分の仕訳はどのようになるのでしょうか?