軽減税率によるコスト増加を計算してみた
消費税増税に伴う軽減税率の導入が取り沙汰されています。軽減税率がイヤな人はどこに投票すべきなの?って記事で書いた通り、色々議論はあるものの、軽減税率が実現されると企業側にはコストがかかるということに異論がある人はいないでしょう。たとえばレジ端末の入れ替え。
試算してみた
絶対、かなり大きなコストになるはずだーと感じたので、ものすごくザックリとですが試算してみました。関東にチェーン展開するスーパーのいなげやを例に取ってみます。
いなげやは、店舗数がだいたい140店舗。それぞれの店舗に大小はあるでしょうが、1店舗あたり6台のレジがあると仮定しました。これは私のカンです。そうすると、いなげや全店で840台のレジがあることになります。
そして、それらのレジは軽減税率対応のためにおそらく全て入れ替えが必要です。いや、もちろん現状のいなげやのレジが軽減税率に対応しているかどうかは知りませんよ。知りませんけど、対応しているレジは現状ではほとんどないでしょう。たぶん。何しろ予定されてなかったわけだからね。
で、レジを全部入れ替えるとして、レジ1台はどれくらいの金額かというと、だいたい6万円と見積もりました。いや、相場はよくわかんないしAmazonのベストセラーを見るともっと安い感じもするんだけど、スーパーの多品種を捌くのとか、クレカが使えるとかを考えるとだいたい6万円ぐらいになるように見えました。想定したのはカシオのNK-2000-4SBKです。
約1億円
で、レジの金額は6万円*840台=5040万円。でも実際に店舗を運営するにはレジ本体があるだけじゃダメで、いなげや本体の中枢システムにレジからの情報をブチ込まないといけません。そこはSEの仕事になるわけで、そこにも外注費がかかってきます。その金額の見積は非常に非常に難しいところですが、SEとしてはよくあるパターンでザックリと、ハードと同じ金額を積みましょう。5040万円。そーすると、全部で1億80万円かかることになります。いなげやの軽減税率対応費用のうち、レジの分は1億80万円です。たぶんね。この、私の超ザックリとした試算だと。
約1億円。うーん、思ったより少なかったかな?いなげやの経常利益は年間30億円程度なので、利益の3.3%がレジ費用で飛ぶことになります。ただ、私が今回試算したのはレジ関連の費用だけで、この他にも経理部の人を増やさなきゃならないとか、営業部の人の残業が増えるとか、そーゆーことは一切入れていません。レジだけ。レジだけで利益の3.3%が飛ぶということは、色々積み上げていくと怖い感じがしなくもないかな。もちろん正確なところは中の人じゃないとわからないでしょうが。
そして重要なのは、この1億円のコストは、社会的には何も生み出さないこと。単に税制が複雑化して要らない仕事が増えたためにかかるコストです。極めて虚しいコストです。ただ損するだけ。
さらに言えば、軽減税率は明らかに利権の温床なので、スーパーマーケット業界の人は、軽減税率を推進すると言ってる政治家の人と癒着しやすくなります。それも軽減税率のコストの一面ですね。
各政党の人はちゃんと計算してんの?
で、気になるのはね、こういう社会的コストを各政党の人がちゃんと試算してるのかってこと。そりゃ軽減税率で食料品が安く済むなら直接的には嬉しいですよ。でもその裏で企業がコスト高に苦しんで、消費税が減っても本体価格が増えちゃあ意味が無い。こういう計算、ちゃんとやってんの?って言いたくなります。「コストは○兆円、メリットは×兆円だから軽減税率を導入したほうがいいのだ!」と数字を出して説明している偉い人を、私は見たことがありません。そこがわかんないと判断しようがないと思うんだけどね。もちろん、導入する/しない、どちらの立場でもね。
軽減税率導入の急先鋒は公明党さんです。
いまこそ、軽減税率 実現へ。 | 公明党
公明党さん、こういう計算してるんだろうか。やってるようには見えないっす。やってりゃそれなりの数字を見せるはず。公明党さんの軽減税率のページにはコストの話が数字では出てこないんだよね。そりゃ街頭演説とかで数字の話まで説明するヒマないのはまあわかるけど、ウェブサイトに載せるならいくらでもできるでしょ。
せめて、例えば東証一部上場企業のコスト増加効果くらいは数字で出して欲しい。そんで、そういうコストをかけても軽減税率を導入するべきなんですよーってのを説明しきって欲しいところです。
イメージ先行の説明じゃなくて、数字を明示した説明をしてほしいっす。
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