税効果会計における永久差異とは何か
税効果会計で「永久差異」という言葉が出てきます。説明しましょう。
税効果会計における3つの差異
そもそも税効果会計というのは、会計上の利益と税務上の所得の差を調整するものでしたね。で、永久差異というのはその差異の一種です。会計上の利益と税務上の所得の差には大きく3つの種類があります。一応挙げておきましょう。他の2つについては別記事で説明します。
永久に戻ってこない差異
永久差異とは、その名の通り「永久に戻ってこない差異」です。例えば、2012年度と2013年度の損益計算書が下記のようであったとします。
2012年度 金額 (税効果会計適用前) |
2013年度 金額 (税効果会計適用前) |
|
---|---|---|
売上 | 1000 | 1000 |
売上原価 | 500 | 500 |
給与 | 200 | 200 |
交際費 | 100 | 0 |
税引前利益 | 200 | 300 |
上記損益計算書内の費用のうち、交際費は税務上の損金として認められません(大企業を想定しています)。つまり、2012年度の税務上の所得は、税引前利益に交際費の分の金額を加算して算出することになります。
そして、交際費は永久差異であって、将来減算一時差異ではありません。もし将来減算一時差異であれば当年度の仕訳として下記仕訳を切ることになりますが、この仕訳も切られません。つまり繰延税金資産は発生しません。
借方 | 貸方 | |||
繰延税金資産 | 100 | / | 法人税等調整額 | 100 |
よって、税務上の所得と法人税は下記のようになります。繰延税金資産が発生しないので、2012年度に交際費が発生していますが、2013年度への影響は全くありません。
2012年度 金額 |
2013年度 金額 |
|
---|---|---|
税引前利益 | 200 | 300 |
交際費による調整 | +100 | 0 |
税務上の所得 | 300 | 300 |
法人税(税率40%を想定) | 120 | 120 |
よって、損益計算書は次のようになります。
2012年度 金額 (税効果会計適用前) |
2013年度 金額 (税効果会計適用前) |
|
---|---|---|
売上 | 1000 | 1000 |
売上原価 | 500 | 500 |
給与 | 200 | 200 |
交際費 | 100 | 0 |
税引前利益 | 200 | 300 |
法人税 | 120 | 120 |
当期純利益 | 80 | 180 |
永久差異は税効果会計の対象外
結局、永久差異は「税効果会計の対象外」ということです。そもそも、税効果会計というのは会計と税務とのツジツマを合わせるために行うのでしたね。将来減算一時差異・将来加算一時差異の場合は会計と税務との間で期ズレが起こるので税効果会計によって調整したわけですが、永久差異の場合は期ズレではなく永久に差が埋まらないので、ツジツマの合わせようがないわけです。
そんなわけで、交際費のような永久差異に関しては、淡々と当期の所得と法人税の算出を行うのみです。
税効果会計関連記事: