前回書いたように、パッケージソフトを開発するような、

「買い手が決まっていない資産を形成するためのプロジェクト」

の場合、プロジェクトとして売上高がゼロのため、売上高配賦する際に配賦係数がゼロになってしまいます。


しかし、売上高配賦する費用を負担させないというのは配賦の考え方に反します。売上高配賦の意図は「大きなビジネスをしているところに大きな費用を負担してもらう」ということです。そして一般に、パッケージソフトの開発(買い手が決まっていない資産を形成するプロジェクト)は、大きなビジネスであることが多いです。買い手がたくさん現れることを期待しているからこそ、買い手が決まっていないうちからパッケージソフトという資産を形成するのですから。

資産形成(製造)と販売でプロジェクトを分けるか否か

このような場合、まず決めなければならないのが、「どこからどこまでを1プロジェクトとして認識するか」です。具体的には、パッケージソフト完成までを1プロジェクトとするか、パッケージソフト完成後の販売についてもプロジェクトに含めるか、ということです。プロジェクトで収支管理している場合、パッケージソフト完成までを1プロジェクトとすると、そのプロジェクトは売上が無いので必ず大赤字になり、その後の販売を別の1プロジェクトとすれば、その販売プロジェクトはプロジェクト単体で見るとボロ儲けのように見えてしまいます。もちろん、システム上はこのように製造と販売を別のプロジェクトに分けて、プロジェクト収支表を見る際に

「このプロジェクトとこのプロジェクトはペアで収支を見なければならないのだ」

と認識して見れば、一応問題ありません。しかし、その予備知識がない人がプロジェクト収支表を見ると、大赤字になっているパッケージ製造プロジェクトは「失敗プロジェクトだな」と認識してしまいますし、販売プロジェクトは「すげー儲かってる。担当者の給料を上げてやらねば。」とか考えるかもしれません。帳票を直接出力する経営企画部の担当者ならば大抵わかるでしょうが、それを提出した先の経営者は、この点を深く認識しているかわかりません。この「判断を誤るリスク」は認識しておくべきでしょう。

パッケージ製造と販売とを分けずに1プロジェクトとしてしまえば、上記のようなリスクはありません。ただ、プロジェクト期間が長くなるため、プロジェクトの最終的な成績を判断するには販売期間が終わるまで待たなければなりません。これはこれで経営上のリスクと言えるでしょう。

売上高配賦の配賦係数をどうするか

そしてもう一つ。売上高配賦の際に何を配賦係数とするかという点が問題になります。いくつか考えられるパターンを記述します。

1.期待される売上高をみなし売上高として使う
製造するパッケージソフト等での「期待される売上額」(予算売上高・売上目標)を見積もり、その数値をみなし売上高として、製造・販売の全期間にわたり均等に割り当てる方法です。製造する前から売上を見積もるというのも乱暴な気がしますが、大抵はその形成資産でいくら売り上げたいのか、という売上目標額は存在するでしょうし、その売上目標額を念頭に置いて資産形成プロジェクトに投入する費用を決めているはずです。これが、資産形成プロジェクトに対する売上高配賦の解として最もオーソドックスな考え方だと思います。

2.発生した費用をもとにみなし売上高を算出する
発生した費用をもとに、みなし売上高を立てる方法もあります。売上高配賦は「大きなビジネスをしているところに大きな費用を負担してもらう」という考え方です。ビジネスの大小を測るために売上高を使うわけですが、資産形成プロジェクトのような特殊要因で売上高がゼロなら、発生した費用でそのビジネスの大きさを測ってしまえ、ということです。これも一つの考え方ですが、費用にどんな係数をかけてみなし売上高を算出するのか、が難しいところです。

3.財務会計上の売上高をそのまま使う
難しいことを考えずに、財務会計上の売上高をそのまま使うやり方もあります。この場合、当然、資産形成中(製造中)は売上高がゼロなので、配賦される間接費はゼロです。しかし、販売中はそれなりに大きな売上高が立つので、その大きな売上高に沿って配賦することでプラマイゼロと思う事にする、って感覚の配賦です。この場合、財務会計システムから取込んだ売上高をそのまま配賦係数に使えばいいので、システム上は何も難しいことを考える必要は無く、管理会計システムを作るSEとしてはラクです。

上記3.の考え方は「手抜きだな~」と思う方も多いかもしれませんが、間接費に比べて直接費が大きい場合は選択しても良いと思います。なぜなら、そもそも配賦するべき間接費が小額なら、配賦のロジックに凝ったところで配賦額は大差ないからです。例えば、我々SIerのような会社の場合、ソフトウエアの製造中には製造している人の人件費(つまり直接費としての人件費)が、間接費と比べてものすごく大きくなることが多いです。開発部門では正社員だけで開発するわけではなく、多くの場合は大勢の協力会社の人に来てもらって製造しますよね。そのため、相対的に間接費の額が小さくなることが多いのです。もちろん、これは会社によるので、SIerでも本社部門に何しているのかわからない高給取りのお爺ちゃんがたくさん居るような場合は、1.のように製造期間もみなし売上高を立てて配賦する方が良いでしょう。

なお、資産形成プロジェクトについては、管理会計上の費用をどう認識するか、という点にも大きな問題が出てきます。そちらについては別記事で書かせて頂きます。


売掛金を即現金化する(ファクタリング)