特別償却とは何か&その仕訳
減価償却において、「特別償却」という言葉が出てくることがあります。特別と言うからには何か特殊な償却っぽいですね。説明してみましょう。
目次
税金を繰り延べる効果のある「償却」
特別償却とは、法人税の支払いを繰り延べる効果のある償却です。特別に固定資産の償却金額を上乗せすることができ、その分「費用」が増えるので当期の利益が減り、税金が減ります。その代わり、早く償却するということは将来に償却する金額は少なくなるので、将来の法人税は膨らみます。
金額は?
具体的にはいくら分を償却できるかというと、取得価額の30%です。
例えば、取得価額1200万円、耐用年数10年の機械装置を買ったとしましょう。すると、特別償却額は30%の360万円になります。この360万円分が初年度所得控除され、その後規定の年数でこの360万円を取り崩し、少しづつ多めの税金を払っていくことになります。取り崩しの年数は、法定耐用年数が10年以上の場合は7年、5年~10年の場合は5年、5年に満たない場合は法定耐用年数をそのまま使います。
仕訳は?
特別償却の仕訳は下記の通りです。まずは初年度の360万円の償却。
借方 | 貸方 | |||
当期未処分利益 | 3,600,000 | / | 特別償却準備金 | 3,600,000 |
え、なんだこれ?って思った人、たくさんいますよね。でもこの仕訳で正しいです。借方が当期未処分利益、貸方が特別償却準備金。
次に、特別償却準備金を7年間で取り崩す仕訳。
借方 | 貸方 | |||
特別償却準備金 | 514,285 | / | 繰越利益剰余金 | 514,285 |
特別償却準備金を取り崩しています。でも、1の仕訳がわかんないと、この2の仕訳もよくわからないですよね。ちょっと説明しますね。
会計上の「費用」ではない
上記の仕訳は通常の償却の仕訳とだいぶ違いますが、それもそのはず、この特別償却は会計上の費用の扱いではないんです。なぜか?というと、特別償却は単なる法人税の繰り延べの制度であって、費用を変化させているわけではないから。上記1と2の仕訳は利益処分の仕訳の扱いになります。
また、通常の仕訳は特別償却とは関係なく通常通り切ります。取得価額の30%を特別償却できるということで、残りの70%を取得価額として計算するのかな?と思うかもしれませんが、そういう計算もしません。上記の場合であれば取得価額が1200万円で耐用年数が10年なので、定額法での償却であれば1年あたり120万円、1ヶ月あたり10万円を償却していきます。
最初に書いた通り、特別償却の制度はあくまで税金の繰り延べでしかなく、最終的に得をするわけではありません。そのことは上記の仕訳を見ても理解できると思います。なので、通常の償却の仕訳は通常通り切ります。一応、仕訳も書いておきましょう。
借方 | 貸方 | |||
機械装置償却費 | 100,000 | / | 機械装置減価償却累計額 | 100,000 |
以上です。感覚が馴染むまで少し時間がかかるかもしれませんが、のんびり理解していって下さい。
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