IOUとは何か

ギリシャの財政がいよいよ危なくなっているようです。その深刻度は私には知るよしもありませんが、「IOU」なるものの発行まで取り沙汰されているようです。このIOUについて説明しておきます。

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I owe you

IOUとは、借金の証書のことです。借用書のことです。IOUってのは何かの頭文字かと思う人が多いと思いますがそうではなく、「私はあなたから借りている」という意味の英文、「I owe you」に発音を当てて「IOU」と呼んでいるようです。経済危機になんともフランクな。例えば、「私はあなたから10ユーロ借りています」という英文は「I owe you 10 euro.」です。まあとにかくIOUなわけです。

ユーロがないから支払えない

で、なぜギリシャ危機に借金の証書がでてくるのか。それは、ギリシャの財政が厳しくて、欧州統一通貨であるユーロを手に入れられないからです。財政が厳しくてユーロが手に入らない。でも、国家公務員にはユーロを支払わなければならない。でもユーロがない。なので、ギリシャ政府としては仕方なく、例えば「後で2000ユーロ支払います」という借金の証書を国家公務員に渡すわけです。それがIOUです。

渡された公務員さんとしては、たぶんユーロがないとモノを買えなくて生活できないので、たぶんその借金の証書を銀行とか両替商とかに売り渡してユーロを手に入れます。「後で2000ユーロ支払います」という借金の証書の場合、ギリシャはこれだけ経済的に厳しいとニュースになっている国ですから、その額面のままの2000ユーロで買う人はいません。例えば1900ユーロとかに割引で買い取ってもらうことになるでしょう。これを繰り返していくとIOUは様々な人に渡り、ギリシャの債務は膨らんでいくことになります。

IOUが事実上の通貨になる

また、IOUを発行しまくってギリシャ国内にほとんどユーロがなくなり、IOUだらけになった場合、おそらくIOUが通貨の代わりになるだろうと言われています。IOUは「ギリシャ政府から後でお金を貰う権利」ですから、それなりの価値があり、また額面も色々なので、お金の代わりには成り得るわけです。例えば、ある商品について「ギリシャIOUで100ユーロ」または「本当の10ユーロ紙幣」みたいな感じで二重価格というか、二重の表示で売られることになります。おそらく、ギリシャ経済が悪化していく過程の中で「IOUを小刻みの額面にして渡してくれ」と公務員さんたちは政府に要求するようになると思われます。

ギリシャがデフォルトしたら

そして、IOUの価値が割り引かれつつもそれなりに価値を認められるのは、ギリシャに小さいながらもそれなりの信用があるうちだけです。ギリシャの経済的信用が全く無くなった場合、つまりデフォルトした場合、IOUの額面が10万ユーロであろうと100万ユーロであろうと、IOUに価値を感じる人はいなくなります。そうなるといよいよ物々交換の世界になります。

旧ソ連崩壊の例

旧ソ連、今のロシアですが、ソ連が崩壊した時も物々交換の世界になったそうですが、その時には「マルボロのタバコ1本」が事実上の最も細かい「通貨」となり、取引されたそうです。なるほど、マルボロのタバコはかさばらないし、保存もそれなりに効くので通貨としての機能は良さそうです。ロシア人さんたちがんばった。

ギリシャも、そんな物々交換の世界に突入するのかもしれません。

普通だったら素直にハイパーインフレになる

そんなギリシャですが、いきなりIOUなんていう聞きなれないモノが出てくるのは、ギリシャがユーロ圏に入っており、自国の意思では通貨が発行できないからです。ギリシャはユーロ圏に入る前は「ドラクマ」という自国の通貨を持っていましたが、もしギリシャがユーロに参加していない状態で財政が悪化したらどうなったかを考えてみましょう。

その答えは非常に簡単です。さっき説明した中では「財政が厳しくてユーロがないので仕方なくIOUを発行する」というシナリオを説明しましたが、自分で自国の通貨を持ち、その通貨の発行権を持っているなら、ガンガン輪転機を回してドラクマを刷って公務員さんたちに給料を渡せばいいわけです。紙幣はいくらでも刷ることができます。

しかし、実体経済が停滞し、「国全体の価値」が落ちていく中で紙幣をガンガン刷っていったら、その紙幣あたりの「実質的な価値」はどんどん減っていきます。つまりはハイパーインフレです。

そんでドラクマの価値が完全にゼロになった状態で国が破綻すると、ギリシャという国全体が「安く」なっていますから、外国からの資本を入れると簡単にギリシャという国を動かしやすくなります。そっから経済再建にチャレンジするということになります。

「ユーロ圏に入った国はインフレさせられない」

「国全体の値段が安くなり、その結果外資を呼び込みやすくなる」という意味では、ハイパーインフレは国が立ち直る上で必要な場面とも言えます。昔、ユーロが導入される時に「ユーロが導入されたらインフレさせることができないので、国の経済が破綻状態になったら引き戻すことができない」というようなことが世間の話題に上ったことがあります。私も当時は同じような疑問を持ったのですが、IOUなんつーものが出てくるとはね。なんというか、世界の経済はうまく回るようにできてますね。あ、そんな呑気なこと言ってたらギリシャの人に怒られそうだけど。

まあ、そんな感じです。

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