配賦計算の際、収支管理単位の配賦係数が全てゼロになってしまい、配賦できない場合が、管理会計システムの運用上は良く発生します。その例を挙げましょう。

組織改正の実際

最も良くあるのは、組織改正に伴う店舗の切り替えによるものです。左の図を見て下さい。「北海道・東北エリア」と「関東エリア」が従来存在していた状態で、両者を統合して新たに「東日本エリア」という組織ができた場合のイメージを示しています。この図では、「東日本エリア」ができた後も、「北海道・東北エリア」と「関東エリア」を存在させています。本来は両者が統合したのが「東日本エリア」ですから、これらの組織が並列になるのはおかしいはずです。ですが、実際にはこのように並列になる場合が多いです。その理由はいくつかありますが、典型的なものは以下の通りです。

  1. 旧組織のコストを新組織が負担したくない
    旧組織のコストは旧組織の成績であって、新組織の部門長からすれば、新組織の成績には含めたくないでしょう。
  2. 旧組織の債務等が残っていて旧組織を残さざるを得ない
    債務等を組織毎に把握している場合、財務会計上でその債務を新組織に付け替えるには、付け替えの仕訳を切る必要があります。それを全ての債務に対してやろうとすると、数百、数千という単位で仕訳を切る必要が出てきます。これは経理部に大きな負荷をかけますし、会計情報の可読性も損ねます。

そういうわけで旧組織を残すことが多いわけですが、そうなると更に次の問題が待っています。旧組織の「北海道・東北エリア」に何らかの売上高配賦対象の費用が入ってきた場合、配下の店舗(左記の「旧平岡店」等)には、売上が無いので売上高配賦の配賦係数はゼロになり、配賦ができないのです。配賦の際には

((配賦前の金額)/(配賦係数合計))*(配賦先の配賦係数)

という式で配賦額を算出することになりますので、この「配賦係数合計」がゼロであるために、

(配賦前の金額)/ 0 * 0

という式になり、devide by zero 等のエラーが出てしまいます。

対応は様々

この問題に対する対応は難しいです。まさに、ユーザ毎の管理会計の方針によると思います。いくつか例を挙げると・・・

  1. 旧組織へは費用をつけない
    お客さんに割り切ってもらい、旧組織には一切費用を付けず、何でもかんでも全て新組織に付けてもらう。
  2. 旧組織の中で、どこでも良いからどこかへ全ての費用をつける
    配賦係数合計がゼロになる場合はIF-THENロジックで分岐し、どこでもいいからどこかの店舗に全て付けてしまうというのも一つの手です。
  3. 旧組織の中で、最下層の収支管理単位へ単純平均して配賦する
    配賦係数合計がゼロなので、店舗の数で割って各店舗に付けてしまうというやり方です。比較的簡単なロジックでできるでしょう。
  4. 過去の売上で配賦する
    おそらく、お客さんとしてはこのロジックでやって欲しいでしょう。しかしこれは困難を極めます。「過去」とはいつからいつまでの期間にするか?とか、「過去」でも売上がゼロだったらどうするのか?など、考えなくてはならないことが山ほど出てきます。(旧組織の債権がなかなか入金されなくて、その旧組織を消せず、売上が立たないままシステム上の組織が延々と生き続けるというパターンは大いに考えられます。)

ただ、一つ覚えていて欲しいのは、「北海道・東北エリア」の費用を「旧平岡店」と「旧手稲店」に配賦するのは、業務上の意味はあまりないという事です。このような場合の「北海道・東北エリア」で発生した費用はエリア全体の残務整理のための費用であるはずで、それを、もう運営していない仮想的な店舗に配賦したところで、その「旧平岡店」の成績をどう評価し、どんな経営判断に反映させるのか?と考えると、多くの場合は「どうでもいいんじゃない?」という結論になると思います。せいぜい、上記の「旧組織の中で、最下層の収支管理単位へ単純平均して配賦する」くらいで済ませるのが良いと思います。


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