「資金繰りが苦しい」と言われても、「ふーん」としか答えられない人、多いんじゃないでしょうか。資金繰りの現場を経験していないと、その怖さってピンと来ないと思います。なので、私が経験した実例を元にしたフィクションで簡単に説明してみましょう。

資金繰りが苦しいとはこういうこと

まずは、前提条件。A社を例にとって書いてみましょう。

  • 2008年12月15日15時までに、商品の仕入れ代金として、関西アーバン銀行の口座から、6億円の手形支払いを行なうことが数ヶ月前から決まっていた。
  • A社の残高
    銀行残高 関西アーバン銀行 さわやか信金
    2008年12月11日(木) 1000万円 10万円
  • 上記の支払いのため、A社の社長が懸命に借り入れ交渉を行い、さわやか信金から、12月15日に6億円を借り入れる契約を12月11日に締結できた。借入金が、A社口座に振り込まれるのは12月15日午前中~昼頃。
  • ゴトー日(5の倍数の日付の日)は銀行が込み合うので、銀行窓口に並んでから窓口にたどり着くまで1時間ぐらいかかる。
  • ゴトー日(5の倍数の日付の日)は銀行が込み合うので、振込み処理をしてから(銀行窓口で振込用紙を行員さんに渡してから)実際に振込先の口座に振り込まれるまでに2時間くらいかかる。→ 現金でデリバリーするしかない。

この前提条件のもと、経理担当者と出納担当者で綿密な打ち合わせを行い、下記のようなタイムテーブルを組んだ。

経理担当者 出納担当者
12日 さわやか信金に、15日に6億円の現金を引き出す旨の根回しを行なう。
15日12時頃 ネットバンキングで さわやか信金 の口座の残高を1分ごとに確認。 さわやか信金で待機。
15日13時頃 口座に振り込まれたのを確認後、出納担当者にTEL。 TELを受け、さわやか信金の窓口に並ぶ。並びながらタクシーの手配をしておく。
15日14時頃 現金6億円受け取り。すぐにタクシーに乗り、関西アーバン銀行に向かう。
15日14時15分頃 関西アーバン銀行に到着。すぐに窓口に並ぶ。
15日15時頃 ギリギリでなんとか口座に入金。

両支店の距離はこんな感じです。

このタイムテーブルの通りに現金のデリバリーを実行し、さわやか信金に、借り入れた資金が入ったのを確認したらすぐに現金で引き出し、関西アーバン銀行の口座に入金してなんとか難を逃れました。

が、このオペレーションでは多数のリスクを犯しています。

  • さわやか信金が15日に6億円を現金で用意できなかったら → 支払ができなくて不渡り
  • 会社のインターネット回線が障害を起こして不通になり、残高確認ができなかったら → 出納担当者が窓口に並ぶタイミングを図れず、現金のデリバリーが間に合わなくて不渡り
  • 携帯電話が障害で不通になったら → 出納担当者が窓口に並ぶタイミングを図れず、現金のデリバリーが間に合わなくて不渡り
  • 出納担当者が6億円を持ち逃げしたら → 当然、関西アーバンの口座に入金できずに不渡り(+現金の損失)
  • タクシーの運転手が6億円を奪って逃げたら → 当然、関西アーバンの口座に入金できずに不渡り(+現金の損失)
  • 窓口に並んでいる人が多くて15時までに窓口にたどり着けなかったら → 関西アーバンの口座に入金できずに不渡り
  • 渋滞でタクシーでの移動に時間がかかったら → 関西アーバンの口座に入金できずに不渡り

ゴトー日はみんな同じように資金繰りに苦しんで殺気立っているので、「ウチの会社だけ先に処理してくれ!」というのは通用しません。また、6億円のデリバリーをしている時は、出納担当者には悪魔が囁いてくることでしょう。数千万円ならどうかとは思いますが、6億円なら、人生を賭けて逃げてみようかと思うかもしれません。

こんなわけで、ほんのちょっとしたイレギュラーな出来事で会社が倒産してしまうリスクを様々なシチュエーションで犯していることになるんです。あと1日だけでも時間があればインターネット上から振込ボタンをポチっと押せば済むことなのに、です。資金繰りが苦しい時は、経理部は極度に緊張した状態でオペレーションをしなければなりません。文字通り、資金繰りが苦しいと経理の現場も苦しく、倒産するか否かのギリギリの線の上を渡り続けることになるのです。


売掛金を即現金化する(ファクタリング)